「恋のときめき」・第9話
鎌倉特有の谷戸(やと・・その昔,鎌倉の街が海底だった頃,
この地方一帯は,リアス式海岸線であり,入り江の多いところ、
その後,土地の隆起で、入り江が地上になった。)の奥まった静かな所に,
「海蔵寺」は有る。
観光ルートから外れているので,訪れる人は程良い人数で有る。
拝観料無しも嬉しい。 そして,何時来ても,花の絶えない心遣いが
なされているお寺で有る。
建物も,茅葺きの屋根、庭も,侘び,寂びが充分満ち満ちている。
失恋した時にこの寺に来れば,最高に、悲しみを満喫できそうである。
訪れる人の入れ替わりは激しいものの,常時、5組くらいのカップルがいた。
その内の一組として,近ちゃんとアンが、縁側の前のベンチに座り,
アンの人生論を聞こうとしている。・・・・
近ちゃんは,アンの手を握り,時折、アンの手のひらや指を優しく,
マッサージ(愛撫のつもりでやっていたのだが,日本流は全く通じなかった)
をしながら,アンの話にあいづちを打っていた。
「生まれは北海道なの、お父さんは、南方で戦死したの。」
「戦後、東京に出て,お母さんの小料理屋を、娘4人が手伝った。」
「弟は一人」
指もみに熱中し、上の空で聞いていたが,
・・・戦後の動乱期を母は,5人の子供を小料理屋をしながら育てた。・・・
「良人は,沖縄の人で、ダンスが上手だった。」
「30年前に、良人とアメリカに渡り,ダンス教室を開いた。」
「生徒は、300人いた。」
「良人は,生徒と駆け落ちをした。」
「アンは小料理屋をやって,子供2人(娘,息子)を育てた。」
「唄は,プロを目指して,レッスンを受け,かれこれ30年になる。」
「日本国を、外から見ていると、特に,経済,政治についてだが、
戦後、50年経つのだが,全ての面で,アメリカにコントロールされて
いるのが良く判る。 アメリカのスパイ活動は,パーフェクトで有る。」
・・・この辺の話は,右の耳から,左の耳へ素通ししていた。・・・・
「今回は,ダンスのMLで、東京で数ヶ所、富山,熱海,伊東,札幌と、
オフ会に出席し、講演と、実技指導するのが目的」
・・・えっ! アンは,そんなにすごい人なの? ・・・・
「近ちゃんも一月位、シスコに遊びにおいでよ。部屋は,有るから。」
・・・随分と,見込まれてしまったものだ・・・
話は,まだまだ続いた・・・、その中から,アンの金脈と、老後の抱負を
聞き出した。
アンの金脈とは,・・・「ビジネス遍歴」
老後の抱負とは,・・・「庵生活をしたい」