件  名 第1話 「姫路の恋人、今いずこ?」
入浴日
編集日 :2001/2/18  20:44

昭和43年3月4日 23歳4ヶ月のサラリーマン2年生の近ちゃんが、
東京駅で涙を堪えて見送ってくれた恋人の顔写真を片手に、新幹線の
「姫路駅」のホームに降り立った。

近ちゃんの任務は、コンピューターの保守で、現在の姫路市にある
新日鐵広畑製鉄所(当時は富士製鉄)の現場に一人で乗り込んだ。

初任給2万6千円、出張旅費が追加されると、23才の若者が
月に5万円を手にすると、結構遊びが出来た。
その頃のこずかい帳を見てみると、
本命の恋人との月いちデート(姫路から新宿往復)、
遠距離交際の空しさを癒す「トルコ、ストリップ劇場」通い、
プロは金が掛かるので現地調達の彼女とのデート、
姫路を拠点とした日帰り「小さな旅」、
アフターファイブのボーリング、一泊3食500円の民宿生活費、
貯金残高10万円で、1年7ヶ月ぶりの帰京であった。

・・・風俗嬢との恋・・・
東京駅で涙を堪えて見送ってくれた恋人を思い出すたび、
出張先での恋いはしまいとの決意もいつしか棚上げ、プロの女性なら
金がなくなれば別れは簡単、と「姫路トルコセンター」通いが始まった。
源氏名「扇さん」2歳年上を指名すること10ヶ月、
扇さんと会った後は、繁華街で食事をし、姫路城公園を散策するのが
お決まりのコースになった。まるで自分ちの庭で有るかのように。
そして、・・・給金の30パーセントが消えた。
    
・・・同年OLとの恋・・・
民宿の近所の奥さんに、職場の後輩を紹介するからと、
アフターファィブでお見合い、気があって、その晩、
月明かりの姫路城でデートする。
隠し事のきらいな「近ちゃん」は東京に恋人が居るのを話し、
その後7ヶ月の交際が続く。平日仕事を終わって、
姫路で落ち合い、食事して、個室喫茶でひとときを過ごし、
月明かりの姫路城公園を肩を寄せ合って散歩する。
彼女の自宅近くまでタクシーを迂回して送り届けた。
休日は、神戸や岡山まで出かけ、満ち足りた青春の日々だった。
 
・・・人妻との恋・・・
民宿「北原さん」の隣の借家に、歌手の夏木マリ似の若奥さんがいる、
旦那は新日鐵の下請けのごつい体の鉄鋼マン、
子供は5歳の男の子と3歳の女の子、子供は1年以上
「近ちゃん」の部屋を遊び場にしていた。
母親も子供を捜しに、庭からちょくちょく覗いていた。
若奥さんによく言われた言葉が未だ不可解である
{あなた、東京に居る人と結婚できないヨ!}子供以上に、
すっかり親密になった隣の奥さんに、姫路出張最後の日、
想い出づくりを懇願する。
歌の文句では無いけれど、「ホテルで逢って、ホテルで別れた。」

33年も昔の話しともなれば、写真もセピア色になってます。