火防(ひぶせ)の信仰で知られる秋葉山大権現は、養老元年(717)遠州(静岡県)秋葉山上に泰澄大師の開創といわれている。
小田原城主大久保氏は代々その秋葉権現を信仰し、城主となった慶長元年(1596)に當所に勧請したと『新編相模国風土記稿』にある。
江戸時代に、量覚院はこの秋葉社の別当寺で、本山派相模本山の小田原の玉瀧坊(ぎょくりゅうぼう)霞下だった。
毎年12月6日に催される火祭りには各地の山伏が参加し、火渡りの荒行などが行われ、火難消滅や無病息災を祈願する。
小田原市板橋にある修験の寺院・秋葉山量覚院では、火伏せや無病息災を願う火防(ひぶせ)祭が行われました。
火災をあらかじめ呪圧し、難を逃れるとされる祭礼です。
修験道であるため神道と仏教が混合した儀式です。
本堂で護摩供養が行われ19時から屋外での儀式が行われます。
内容は山伏問答のほか、修祓(しゅうばつ)、剣、斧、弓での祓いの作法、火生(かしょう)の舞とも呼ばれる火生祓、山伏による火渡り、最後には信者(参拝者)も火渡りをすることができます。
特に火生祓は、松明で梵字を描く全国的に希少な作法です。
非常に荘厳な儀式であるだけでなく、踊りのように見えることから、これを目当てに参拝されるかたも多いようです。
火渡りが終わると、祭壇周辺の飾りや竹、注連縄(しめなわ)につけている紙垂(しで)を頂戴します。
地元のかたは、頂いた飾りを火伏せを願って神棚に祀るそうです。
----------------------------------------------------------------------
火防(ひぶせ)祭りの大まかな流れ。 3本の動画で紹介しています。
@ 火祭り開始前の本殿参拝 ・・・ビデオ:1分4秒
俗にいう修験の火祭りは、本山派修験(天台宗系)では採燈護摩供養、当山派修験(真言宗系)では柴燈護摩供養(共に「さいとうごまくよう」)という。護摩供養は真言宗などで盛んに行われ、神聖な火炎で罪穢れを焼き尽くし、新しい力の復活を祈り、現世の利益を祈るものであり、修験道では特に力を入れて取り組んでいる。なお、量覚院は本山派に属している。
祭事を始めるにあたって、秋葉大権現に参拝する。量覚院は、神仏分離以前にはこの秋葉山大権現の別当寺であった。なお、秋葉信仰の本山の静岡県秋葉山も修験道の霊地だった。
A-1 山伏登場 ・・・ビデオ:51分45秒
ホラ貝を吹き鳴らしながら山伏が祭場に登場する。
ネット情報によれば、山伏は何事かの合図のために(例えば神事や戦闘の開始、退却など)ホラ貝を吹き、その吹き方にも決まりがあるというが、道中で吹き鳴らす場合は、その音によって道々の魔を払うという意味もあると考えられる。
A-2 祭礼の始めにまず修祓(しゅばつ お祓いのこと)
神道の祭事では、携わる人たちの穢れを払うお祓い(修祓)を最初に行うが、修験道でも同じである。ただ、手にするものが神道では、紙垂(しで)と麻苧(あさお)で作る大幣(おおぬさ
大麻ともいう)だが、ここで修験者が振っているのは植物の枝先か葉先のようだ。
頭につけているのは頭襟(ときん)、着ている法衣は鈴懸(すずかけ)、背中にボンボン状のものが二つ見えるが、胸にも四つ付いていて帯で繋がっている。結袈裟(ゆいげさ)と呼ばれる。これらは山伏独特のこしらえで、密教的な解釈がなされている。
A-3 火をつける直前
量覚院の火祭りは師走6日の夜に行われている。寒い季節だが、夜の火祭りは何とも言えない雰囲気を漂わせていた。暗くなるのを待って聖なる火がつけられた。
A-4 祭場巡回
火がつくと、18人ほどの山伏がその回りを回る。(女性の山伏も5人いた。) 先頭の数人はホラ貝を吹く。その音(ね)で魔を祓い、祭場を清める意味がある。
A-5 山伏問答・・・火まつりの噂を聞きつけ、参加させて欲しいと山伏の駆け引きが
この祭りの山場・・・山伏問答で参加の許可をもらった6人が加わり、山伏は24人となった。
A-6 宝剣式舞、斧、弓、神主が起請文を読み上げる
日本刀を振り、魔を祓い、祭場を清める。その後ろで腰掛けている修験者の姿は、まるで役
小角(えんのうづぬ)のようだ。
A-7 火踊り(火文字)・・・ヲタ芸の様な、松明で描く灯り文字
頭巾をかぶり、腰掛けて控えていた山伏が、二本の松明(たいまつ)を手に登場。
これを火踊りといっていいかどうか分からないが、まるで踊りのように演劇化されている。 どのような意味が込められているのか、聞いてみたい気がする。この火踊りの場面は、この日のクライマックスの一つである。
A-8 火渡り
火祭りのもう一つのクライマックスは火渡りである。
山伏全員が裸足になって炎が収まった炭火の上を渡る。
我が身を聖なる火炎で焼くことによって、罪穢れを焼却させ、命と力を復活させる意味が込められている。
このあと、希望する一般の参加者も火を渡った。
B 祭場のしつらえ ・・・ビデオ:14秒
頭上に張ったしめ縄はこの場所が神聖な範囲として区切られていることを表している。
細かくはさみを入れた独特の形の紙垂(しで)を垂らしてあって、その形が美しい。祭場の中央には竹の先を六つに割って、それぞれに黄色、赤、緑、紫、青、白の色紙の紙垂を垂らす。
祭壇の中央には、山伏が神霊などを運ぶ、笈(おい)が置いてある。 |