秋景の平林寺境内は、紅葉や楓、銀杏に彩られた錦色の耀きに包まれており、多くの人々を招きいれているのだが、春景は白と黄緑色の淡色で、訪れる人もあまり多くは無い。
私は、昨年秋に訪問した折り、シダレザクラの古木を見つけたので、桜の季節を待って、再訪したのである。静けさの漂う散策道は、早咲きの桜の花びらで白く敷き詰められ、目線を上に向ければ、七色の緑が飛び込んでくる。
境内の半僧坊堂前の枝垂れ桜も、見頃となって、私を迎え入れてくれた。
境内奥地の大河内松平家廟所の墓守桜も満開である。
ふと足元に視線を落すと、こぼれ落ちた楓の種が芽吹き、生まれたばかりの初春を育んでいた。 |