D90が観た画像  d90-18138

東京都世田谷区瀬田
撮影日 :  2018−2−18
昭和の木造建築の豪邸・旧小坂邸
「昭和の木造建築の豪邸」を取材したのは3ヵ所目である。
その3ヶ所に共通しているが、昭和6〜12年の建築である。
この時代背景は、大正から昭和初期にかけては、第一次世界大戦終結後の世界恐慌が日本を襲い「昭和恐慌」の数年後である。
高価な銘木の生産地も木が売れず、建築に関わる職人たちも仕事にあぶれていた。
そんな時だから、日本各地からの銘木や石材集めもスムーズに運び、腕のたつ職人たちの確保も容易であったらしい。
私が特に共通していると感じたものが・・・「京都の北山杉の一本丸太を利用した軒先」である。 廊下の天上部にある。

@ 日興證券の創立者・遠山元一が、他人に渡ってしまった生家の土地を買い戻し、昭和11年に母親の住宅用に建てた。
 ⇒ 遠山邸 ご覧下さい。

A 津雲國利(明治26年−昭和47年)は、安田銀行、古河銀行、下野銀行を経て昭和3年に第1回普通選挙で初当選以来8回、22年間にわたり衆議院議員を務めた。
自宅用に津雲國利が昭和6年から昭和9年にかけ建造した。
 ⇒ 津雲邸 ご覧下さい。

B 二子玉川駅から路線バスで5分ほどの高台で、富士山も見える「世田谷区瀬田四丁目」にある『旧小坂家住宅』。
小坂順造(1881年〜1960年)は、東京高等商業学校卒業後に日銀へ就職、信濃毎日新聞・信越化学工業・信濃電気・長野電燈の社長や、日本発送電鰍フ総裁を務め、衆議院議員にも当選している。
やはり、遠山邸や津雲邸と同じ時代背景で、昭和12年に別邸として建てた屋敷。

小坂順造の出身地は長野県のため、故郷を懐かしんで木造和風平屋建(一部二階建)で、茅葺き風の古民家を思わせる外観を持っている。
間取りは、南面して建つ主屋棟を中心に、西側に応接棟、東側に台所や浴室などの生活棟、南東側に渡り廊下を介して内倉、その奥に二階建の寝室棟を建てた雁行型(雁が羽を広げて飛んで行く)の配置となっている。

建物内部の詳細に付いては、「風のコラム」なる配布資料があるし、管理人や解説員が常駐しており、希望すれば案内をしてくれるので、利用する事がのぞましい。
写真も随所に渡って撮影しているので、今回はスライドショーの写真下部にも解説文を書き込みました。
-----------------------------------------------
まず「玄関」は土間となっていて、天井を見上げると古民家で見るような梁組で、梁材は奥多摩の名主屋敷のものが使われている。
玄関に隣接する「茶室」は、6畳で炉を切ったタイプで、床の間は略式の壁床(織部床)、天井は蒲簾が張られている。

主屋の北西に位置する「書斎兼応接間」は、部屋自体が和洋折衷であり、また山小屋風でもあり、独特な趣きのある部屋になっている。
書斎内部は、一見しては理解に苦しむものが多い。
暖炉の上の金箔の洞(ほら)、何を飾っていたのか?  柱は赤松の面皮柱、床は寄木板張、壁に張られた腰板には鉈目削りの装飾、壁紙(紙に布を貼った様な)も現在の技術では復元できないとか。
窓の構造も・・・外側はガラス戸、内側は障子、そして真ん中に板戸がある。 (空襲警報がなったら、外に灯が漏れないように板戸にしたのかしら。)

玄関から上がると、まずは東西に伸びる畳廊下があり、その先に12畳半の居間と10畳の茶の間がある。
居間は一間半の床の間と付書院を設け、天井は高価な薩摩杉が用いられ、数寄屋風のつくりとなっている。
茶の間との境にある欄間には桐紋の透彫が入っているのも特徴の一つ。

茶の間の東には3畳の和室、台所、6畳の女中部屋、納戸などがあり、廊下の角には懐かしいというか、昭和の風情のある電話室がある。
女中部屋の出入り口上部に、呼び鈴ランプとブザーが有り、何処の部屋からコールがあったのか分かる。 ・・・遠山邸でもみた。
こういった主体部の凝った建築は大正から昭和前期にかけて文化人の間で流行した民家風和風住宅の意匠とのこと。

主体部の南東には南方向に延びる廊下があり、その途中には二階建の内倉がある。
内倉には鉄製の防火扉が付けられ、収集していた美術品や調度品、家財道具が保管されていたそうだ。
この蔵の前にはかつてこの家で使用していた古い冷蔵庫がさりげなく置いてある。

この内倉の先に二階建の寝室棟がある。
この建物は完全に洋風となっていて、寝室の手前には階段ホールと更衣室があり、二階は非公開となっている。
メイン部の寝室はいかにも洋室といった部屋になっていて、飾りの暖炉があり、凝った照明器具があり、そして現在では暖炉の上の壁には小坂順造のレリーフが飾られている。
この寝室の西側には小さな窓辺の部屋が設置され、今は植木が邪魔をしているが、昔は富士山を望めるような景色を楽しめたそうだ。

庭に出て見ると、不思議なものが目に入る。
主屋の屋根上部に、囲炉裏で薪を燃やした時の煙抜き見たいな構造が見える。・・・(長野の古民家の風情を求めたのか?)
さらに、屋根の庇(ひさし)と雨樋の間にある空間の目的・・・(全く分からない)。

2009-9-19から、Nikonカメラの『D90』を愛機として、撮影を開始しました。 1999年のホームページ作成時からの作品集です。
		画面表示のためのツールも技術習得の為にいろいろと取り込み、
		数多くの技法を習得し、シリーズ作品集として、管理しております。