8番・「まつだ松林堂」のお雛さま展示会場は、お店の2階だった。
和菓子屋さんの引き戸を開けて、内部を見渡すが、お雛さまは影も形も無かった。
「観光案内所の女性従業員が一番に薦めるので、不審に思った」・・・が、思い切って声をかけると、中学生らしき息子さんが出てきた。
「お雛さまを見せて下さい」と、言うと、息子さんは奥に消え、代わりに着物姿の若い母親が現われ、「こちらへどうぞと」・・・。
幅50センチほどの通路に、半分はカーペットそして半分は土間のまま(ようは、奥の部屋から店先に出れるシステムに成っている。)
私は、背中のリュックが商品に触れないように細心の注意をはらい、2階へと上った。2階には、部屋を前後2つに分けて、来客が座る場所と人形とが対面形式で、桃の節句のお雛さまと、端午の節句の人形と幟旗が飾られていた。
着物姿の母親は、撮影の邪魔にならないように気を使ってくれているが、私は、ピントの合わない被写体に、そして、迫り来る気動車の残り時間に多少の焦りを感じ、母親との「雛談義」をあまり語らず、店を後にした。 (着物姿の美しい女性に、初老の老人が、いい年をして雛めぐり旅。 引け目を感じたか・・・) |