6月の栞 『秩父下吉田のヒメ蛍』

6月5日、今年83歳になられるF氏から、ホタル情報が入った。
5月29日気温19度=266。 6月3日気温15,5度=84。 4日気温19度=434。
ついでに4日の駐車車両は31台で、道路左側に、長い列だったとのこと。
「流石に、足腰の衰えから毎日カウントする事はしんどくなった。」と、電話の向こうでおっしゃっておられたが、どうしてどうして、そのお声はお元気そのもの、安心いたしました。

反面、やや疲労を溜め込んでいるのは自分の方。
逗子花火の前に長野まで棚田撮影に出かけ、そのまま逗子海岸へ直行しての場所取りは、翌日の疲労感が半端じゃない。
もし秩父のF氏からお電話を頂かなかったら、夕方からの晴れ予想が出ていてもダイヤモンド富士撮影にさえ行かなかったことだろう!
天気予想的には、昨日より北風も収まり午前中の雨も上がったので、条件は良いと思った。
ただ、ホタルより、F氏とお会いできる事の方が大事。
夜の10時にお邪魔する事で受話器を置いた。

とりあえず、ヒメ蛍用短焦点レンズをカメラに装着し19時に出発。
つい一昨日、圏央道を走ったばかりで、大型トラックの運転手のように決まった道を走っている感じがしてならない。
後楽帰りの車で、交通量は多かったが、順調に日高ICまで走る。
ここからR299を使って下吉田まで行くのだが、退屈な一本道を前の車にくっ付いて走るだけ。
だから毎回殆ど決まって60分の所要時間。

秩父も人口減が続いているというが、圏央道青梅IC辺りからから皆野町、あるいは小鹿野町まで有料道路でも作れば、観光客も増えるだろうに。
一度関越道に出てから、花園IC経由皆野・寄居道路(有料)で戻るようなルートでは、秩父は遠く感じてしまう。
何となく疲労を残している時は、こんな「無い物強請り」をしてしまうの。
そんな疲労感もF氏のお元気な姿を見て、どこかへすっ飛んでしまい、ホタルのピーク時間もそっちのけで、一時間半以上話の花が咲く。

結局、撮影に入ったのは、日付も変わろうとした頃。
意外にも気温が16,5度しかなく、ホタルの飛翔は昨日より少ないとF氏が語り、一昨年来一番のヒメ蛍密集箇所には、まばらにしか飛んでいなかった。
その代わり、その奥の栗の木の下は可也の数で、光の絨毯。
が、しかしカメラマンの密集度も半端でなく、チョッと一触即発を感じる三脚の置き方。
いつもの草原は、畦道に沿って一直線にカメラを置くので各カメラマン余裕の設置なのだが、この栗の木が林立する場所は、奥の方にカメラを入れ込んでいる者もいれば、ローアングル撮影もいて、一人の女性カメラマンは真っ暗闇で、自分が置いた自分のカメラを探してウロウロしていたり・・・。
新月に近く、条件はいいのだが真っ暗なので、目が慣れて来ないと、枝に頭をぶつけたり、へこみに足を取られたりで結構危ない。
自分も、危うく足元に於いてある、どなたかのカメラを蹴飛ばしそうになり、ひんしゅくを買いました。

ここも、大分知れ渡ってしまったようで、若いカメラマンが多いのが目立ちました。
一昨日、逗子でお会いしたN氏ともヒメ蛍撮影について意見を述べ合ったのですが、「結構苦労して撮影した割に、一般の人の評価はそれに見合っただけ、追従してこない。」と言うのが彼の感想でした。
勿論彼も、人に受けようとして、写真を撮っている訳ではないことは言うまでもありませんが、そういう要素は必要だし、多くの部分で自分もそう感じています。

考えてみれば、花火とホタルは、ながーい時間開放しておくホタルと、ある意味一瞬を切り取る花火では、「光もの」として、一くくりには出来ない被写体です。
N氏は「花火のあの一瞬にハマる」と言っていました。
「ハマる」情熱があるうちは、人生楽しいですから。
と言うのも、疲れも有ったでしょうが、ここでカメラをセットしてピントを合わせているうちに、結構やる気のない自分を感じていました。
途中参加で、周りのシャッター音に、気を散らかせた訳でもないとは思うのですが、なかなか合わないピントに、やめて帰ろうかと一瞬思いました。
被写体に対する夢中さと集中力が薄いのです。
確かにヒメ蛍の撮影に「ハマっていた」時期は少し過ぎていると思うし、それをカメラで撮って「撮れた」という喜びも、撮れなくて燃えていた時期に比べれば、下火。
よって、はっきり申し上げて去年より下手。
いや、きっとホタルの撮影に熱がなくなったのではなく、ここのカメラマンの多さに嫌気が差したのだろうと思います(やる気の無さは、それに比例して枚数も僅かです)。

翌日6日、午前11時半ごろ、まだ床に入って4時間半しか経っていないと言うのに、F氏からの電話で起こされた。
昨日も400頭近くでていたそうで、気温が低い割には飛んでいたとのこと。
それより、例年の撮影ポイントである「草原」の草が、地主さんによって綺麗に刈り取られてしまって、昨夜は、少なかった事を教えられた。
「だからみんな(ホタルの事)木の下に逃げ込んじゃったんだよ。」
「地主さんて?」
「Oさんよ!、畦道だけでよかったのに、日曜で休みだったから、ぜーんぶ刈っちゃったのさ・・・。」
私、ただ苦笑するだけ。
「じゃあ、今年はもう草が生えてこないから、あの場所はダメですね?」。
「そういうこと」。
Oさんとは車が道路一杯に駐車してあって、止めることが出来ない時は、庭に止めてもいいと許可をもらっているほどの知り合い。
あの若いお父さんの顔を思い浮かべて、笑うしかなかった。
(機会が有ったら、あそこの草は刈らないでほしいと伝えておきます。)
F氏は続けて、「土曜日までは草の上をかなり飛んでいたのに、昨夜は様変わりよ!。ホタルのリーダーが指示したんだろうね!。」
長年観察していると、リーダーの存在も感知できるのか!F氏の言葉は重みが有った。
毎年、大量のキュウリとトマトを下さり、律儀なF氏に頭が下がります。
有難う御座いました。
どうぞ、お元気で。
龍勢で又、お世話になります。

(周辺環境状況メモ)
@新しく出来た一戸建のお宅付近は、以前からそれ程多くはなかったもののヒメの飛翔が見られたが、当然全くいなくなりました。
但し、こちらのオーナーさんは、非常にヒメ蛍にご理解があり、部屋の灯りを弱めにしたり、厚手のカーテンを引くなりして、配慮してくださる方です。
我々も、敷地などへの立ち入りや、特に仲間同士で来られているカメラマンの話し声の大きさに注意したいものです。

A通称「竹林」付近は、県道法面の下草を綺麗に刈り取ったか、多少の伐採が有ったようで、道路からのオレンジ光が結構入り込む様になり、蛍はいるものの撮影はし辛いです。

B突き当たりの、崖エリアは、一昨年と比べ、昨年同様少なくなりました。
特にイノシシ避けのため設置してある、点滅ライトのせいか、向かって左側は殆どいません(確か、奥にお墓が有った筈なのに、草ボウボウで、石碑もなくなっていたのか暗くて見えなかったのか確認できませんでした)。
突き当たりは、カメラマンも数名でしたから、何よりの少なさの証明でしょう。

撮影日:2016−6−5  埼玉県秩父市下吉田にて

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拡大写真でご覧頂けます。

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