5月の栞 『相生山のヒメボタル』

           <ヒメボタル撮影回想>
ヒメボタルの遠征も、北から岩手県二戸、埼玉県秩父、山梨県山中 湖村、静岡県冨士山周辺、同市御殿場、そして名古屋城まで回った 。

その中で、二戸は発光開始時刻が早く、ブルートーンでの撮影が可 能。
但し「お休みなさーい」も早い、良い子の見本。
規模は自分が 行った中では最大だが、発光時間帯が短いので回りきれない。
冨士山 西臼は近いのでお気軽スポットだが、霧の発生が多く、ピーク時での ヒメとの遭遇の確率は低い。
怖さも多少ある。
おそらく無限に近い、冨士山のあちらこちらでヒメボタルの飛翔はあるのだろうが、冨士山樹林相手では、それを捜すのは不可能に近い。
山中湖村のそれは別荘地なので コメントは差し控える。
御殿場はご存知、ニノ岡神社だが、宮司さんのご自宅の中にある竹林は密集しており、尚且つ急傾斜、当然広さも それ程でもないので、昨今のインターネットの普及で可なり全国から撮影に来られるように成り、大変な激戦地と化した。確かに、ピーク時には無数の黄金の玉に出会える。
神社へ続く階段、灯篭そし て境内は数が少なく、パソコンで100枚くらい重ねないと見栄え はしないかも?
この周囲を探索されれば、絵になるロケーションを 開拓できる可能性は含んでいて、ピーク時を外してしまっているの で確かな事はいえないが、林道や金網越しに私有地にカメラを向ければそれなりの撮影は可能だ。
秩父市下吉田地区は、自分が場所探しに苦労し、ようやく探し当てた場所だが、今と成ってはピーク時の金曜日〜土曜日は車が30台ほど縦列駐車する、人気ポイントとなっ てしまった。
地主さんや、龍勢花火の方とも親交を深めてきた場所だが、如何せん訪れるカメラマンが多くなりすぎた。
ポイントは3 〜4箇所あるものの、その年によって、多く飛ぶ場所が限定されていて、そこにカメラマンが横一列、あるいは木々の中まで入り込んでしまい、ヒメボタルの黄金の海に、ピンボケのカメラマンが写って いた事もあった。
昨年は道路側(F氏ご自宅側)の竹林が間引かれ、道路近くで竹林の中を飛ぶヒメを撮影する事が困難になってしまった。
更に、新たに戸建ても建ち(こちらの住人は大変ご理解のある方で、シーズン中は部屋の灯りを暗くするように努めてくれたりする親切な方だが) 、余りにモラルが低下すれば・・・。
点在するとは言え、住宅が建つ一角なので、いつ規制がかかってももおかしくない。
名古屋城外堀のヒメボタルは数こそ多いが、明るすぎるのと、人の多さで撮影には向かない、と自分で判断し、一度行ったきり再訪していない。
勿論近ちゃんギャラリーに掲載するほどの作品は一枚も、( 一枚くらいはあったかな?)ないと言って良い。
名古屋高速や、 ビルが建ち並ぶ横、昔は名鉄が走っていたとか? 橋の上から見下ろすポイントでは、周囲からオレンジの光が差し込み 、更には見物客も次から次に来るので三脚は邪魔者扱い。

                <相生山緑地オアシスの森>
相生山緑地は、ここに道路が造られるとかいう計画があり、ヒメホ タルの生息が危ぶまれて久しい。
飛翔数に関する情報も挙がって来 ないし、比較的現実に近い相生山のヒメボタルの写真(100枚近 い比較明合成をした挙句、パソコンのソフトウェアーで修正した写真では現実離れしすぎていて、あまり参考にならない)も目にしな いので、足が向かなかった。
今年、名城外堀のホタル発生数をブログで眺めていると、本来ならとっくにピークを過ぎてもおかしくな い5月下旬に2000頭の数字をたたき出している。
長良川も早いけれど、名城も速さでは負けていない。
しかし、今年は一週間近く遅い。
名城外堀から南東方向に20キロにも満たない距離にある相生山だから、ヒメボタルのピークも似たり寄ったりでは?・・・。
天気は上々、気温も高め、ほぼ新月、湿度やや低めだが、トータルすると 条件的には良い方。
飛翔のピークは22時以降だが下見を兼ねて、 早めの15時に出発。
新東名、東名阪、など高速使いまくりで3時間半、通行料金休日割引で3800円〜4000円位、 一度は尋ねたかったヒメボタルの有名な飛翔地。

相生山周辺は、れっきとした住宅地、付近は小学校やコンビニにも 近い。
双子池から菅田口にかけては農家や畑も見られる。
とりあえずは駐車場を探す。
しかし下調べをした場所に、みすぼらしい駐車場はあったが、ポールが立ててあり閉鎖。
丁度、犬の散歩をしていた初老 の男性に尋ねてみたが、17時で閉鎖されてしまうとのこと。
「どこか車とめる場所ありますか?」と聞くと、この先の砂利道なら大丈 夫とのこと。
公園の入り口付近は、駐禁の取締りが来るから、やめた方がいい、とも教えてくれた。
ついでに発生状況を尋ねると、「昨日は凄かった。今日も期待できるんじゃあないかな」と。
19時頃、 「山根口」から下調べに入る。
付近には車が数台止まっていたが、道幅 もそれ程広いわけではないし、近所の住民が通報すれば一発アウト と言う感じ。

               <探索ルート>
「山根口」を入ると直ぐに道は二手に分かれていて、メインは左手の梅 林の小路。
この公園の中でも最も人が多く上がって来るだろう、比 較的開けた感じの歩き易い道だ。
自分としては端から探索するくせがあるので、少し迷って右側の狭い道を進むことにした。
「野辺の小径」と名付けられたその小径は本当に狭く、結構暗かった。
勿論、未だ19時を回ったばかりで、ホタルの発光は確認出来なかったが、 暫く進むと早くも三脚を立てた若いカメラマンが一人スタンバイしていた。
それは手前に生える竹林越しのホタルを捕らえようとしてい る構図だった。
早速、豊橋から来たそのカメラマンに声をかけ、場所(ポイント)を尋ねる。
梅林の方はもう先週の木曜日くらいがピークだったとか?、ここは、余り人が来ないのではないかと思ったのと、竹林があるので・・・。
確かにここまで歩いてきた時、それ までは雑木林的感じの両側だったが、ここだけ左側に竹林が開けてい た。
ポイント1をゲットし、トンボ池方向へ歩く。
左手に竹炭焼き小屋を眺めながら、「菅田口」に近い所から、 低木の小径へ入る。
急坂を上りながら見晴らしの丘へ。
道は必ずしも歩きやすいとはいえない。
樹木の密集度も多いほうで、 薄明かりの中だったので、何とか先が見えたが、もしも初めて、ここを真っ暗闇で歩くとすればチョッと怖い。
要所に道案内板があり 、相生山を守る活動記事なども見受けられるが、 人間とは出会わずひたすら歩く。
やがて、相生口に繋がる比較的広 い道に出た時はホッとした。
と同時に早速「相生口」方向から上がって来たカップルにポイントを聞かれたが、梅林付近が先週は良かっ たとだけ答えておいた。
8時近くになり「山根口」付近で3頭ばかり光り始めているのを確認、地元の家族連れが何人か歓声を上げていた 。「早!」反時計回りで、まだ6時の針から12時の針まで、半分しか探索できていなかったが、急いで機材を取りに車に戻った。

                          <撮影開始>
車に戻ったのは20時を回っていて、可なり焦り気味。
11時頃が ピークと聞いていたので、余裕で一周できると思っていたからだ。
勿論、残り半分を手ぶらで回っても良かったのだが、発光し始めているヒメを目の当たりにしては、そんな気分ではない。
先程話しかけた青年の所を目指して歩く。
更にもう一人、大判カメラをでっかい三脚に載せて撮影しているカメラマンが増えていた。
地元の方で 、四季を通じてここへはよく来るそうだ。
今日は人が歩かないうちに、小径を横断するヒメボタルを撮影したかったそうで、足止めの 依頼をされた。
もともと、これ以上先に行くつもりはなかったので 、その旨を伝え先程の若いカメラマンの隣へ陣取った。
22時頃には前方の山の斜面?(暗くて正確な地形は不明)をスクリーンにするかのように、一気に数を増やしてきた。
そして、23時頃には後方の雑木林の中も凄い事になっていて、これならどこでも撮影できると確信した。
むしろカメラマンや、人様が来にくい場所でヒメが乱舞する場所を、およその見当を付けて探しておくのも面白いと思っ た。
23時頃にはカメラマンも10名ほどにはなったが、前日に比べれば極端に少ないと、昨日も来た親子は言っていた。
矢張り金曜日から土曜日にかけての撮影は避ける方が良い。
広い相生山のどれだけの場所で、このような乱舞が見られるかは、今回の探索では役にも立たなかったが、一つだけ言えることは、このポイントは地形的に特徴があって、お勧めではある。
つまり、直ぐ目の前の竹は少々本数が多くて邪魔ではあるが、その後方は堀のように土地が窪んで いて、少し高いところから低地を見下ろす感じ。
更に30メートル〜40メートル後方が山の斜面になっていて、 そこから飛び立った?ヒメボタルがワイドな高低差をつけて乱舞する。
通常ヒメボタルの飛翔高度はそれ程高くなく、むしろ地面に近 い場所を飛んでいるのだが、ここは違っていた。
参考になるか否かは判りませんが、おそらく縦位置で撮影して、上から下まで ある程度万遍なくヒメボタルの光を捉えられたのは、 今回が初めてではないかと思います。

            <撮影後記>
是非残して欲しい自然の宝庫。
散策していると、地面にはゲジゲジ 、ダンゴムシ(山蛭はいないで欲しいが)、小さな蛾が顔にぶつか ったり・・・、夏前でも虫の活動が活発だ。
この山一帯にヒメボタルが生息している事を考えなくても、周囲から住宅が押し寄せてき て、ここに残された一山の自然は周辺住民の憩いの場でもあるはず。
今回初めて探索し撮影に臨んだのだが、まずは60点ほどの出来 だとしておこう!落第点ではないけれど、きっとこの場所を全て探 索したら、もっといい得点がつくだろうと思う。
その意味では出かける価値はあるのだが、往復600キロ、殆ど高速道路利用、おまけに起伏のある山道を歩いたせいか疲労が二日間続き、だるかった 。
水曜日にはようやく体が軽くなり、回復力の遅さに年を感じた次 第。
最も、撮影時間も長く、その間、折りたたみイスに座ったり、 歩いたりで、結構立っていた時間も長かったのか?。
撮影を切り上げ、コンビニのパンをかじって、午前3時に現地を出発。
帰宅は6時45分(途中事故渋滞)だった。
一年ぶりのヒメボタルの乱舞を見て、神経が高ぶり、なかなか寝付けなかった。

撮影日:2017−5−27  愛知県名古屋市天白区菅田3丁目〜野並字上新田相生山野辺の小径にて

拡大写真でご覧頂けます。

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