7月の栞 『御殿場ヒメボタル』
「今度の日曜、仕事が19時半で終わりますので、21時頃ご自宅
にお迎えに参ります。」と近藤師匠にメールを入れた。毎年この時期、恒例のヒメボタル撮影のお誘いだ。 今年は自らも秩父へ行く時 間がとれず、5月の相生山以来のヒメボタル撮影となる。 ゲンジボ タルと比べて、ヒメ撮影は場所的にも、被写体的にも結構失敗が多い。 撮影場所は里山なら良いほうで、山奥と言うこともある。 よって怖い。 被写体的にはイベントでヒメボタル祭りなんて開催している所はゲンジのそれに比べれば、圧倒的に少ない。 でもである、前・御殿場市長だった宮司さんが司る二岡神社は、ピークを狙って地元の子供たちなどを集めて、鑑賞会を行っている。 ゲンジではなくヒメで、である。 敷地内の庭と急斜面に生える竹林は、相当凄い数のヒメが飛び交う。 6月30日に行った千条の滝で話をした二人連れのカメラマン(埼玉県東松山から)によると、数日前に行った御殿場のヒメボタルは 20時半頃から飛び出すのもいるそうで、ヒメも子供向きに早々と飛ぶようになったご様子。 そこに群がる大勢のカメラマンが斜面に足を踏ん張って三脚をずらり並べるので、それほど広い訳ではない 「お庭」は大混雑。 ネット社会を反映して新参者(ヒメボタル撮影初デビューカメラマン)もチラホラ目立つそうだ。 この神社ほど、 お手軽にヒメボタルの撮影が出来る所は、自分としては見つからない。 ピークは宮司さんも教えてくれるし、ヒメの頭数も申し分ない 。 「熊出没注意」の看板もないし、恐怖感はゼロ。 ただ、 ここも秩父同様、カメラマンが増えすぎた。 完全に土地面積に対してのカメラマン密度は高すぎる。 21時過ぎに近藤師匠のご自宅のある海老名を後にしR246を走っていると、久しぶりにお会いした師匠との会話も多岐に渡る。 やがて目的地近くに差し掛かった時、師匠が、「廃屋付近を探索しよう!」とおっしゃった。 「どうせ、宮司さんの庭は、カメラマンで 一杯だろうから・・・」。 実は自分も、立寄ってみる価値はあると以前から思っていたポイント。 だから、「廃屋」で意味は分かった。 しかし、この近辺、昔は一軒家がしっかり在ったのだろうが、今は立派な石の門と、壊れかけたフェンスや、破れた金網の塀が残 っいるだけ。 無人の家屋が目立つ。 以前「SDさん( 知る人ぞ知る)」に、この中を案内していただいた時、倒壊した木造建築を暗闇の中で見て、可なりのレベルで怖さを感じた。 「SDさん」は自分より数段肝っ玉が座っていて、平気で案内して下さったが、ここにも何食わぬ顔で(感情がないのが羨やましい)ヒメボタルは飛んでいた。 今夜は近藤師匠と二人なので門から少し入ったところに三脚を構えて、廃屋の輪郭すらはっきりしない暗闇にレンズを向けて、 もう二度と来なくても良いように、びくびくしながら激写した。 時折上から小枝か何かが屋根の上に落ちるのだが、その音がやたらに甲高くて、「ウェー、勘弁してくれー」って叫びたくなる感じ。 後ろでカメラを構えていた師匠もいつの間にか別なアングルを捜しに姿を消していて、いよいよ「胆試し」 もクライマックスだ。 廃屋の中から何かが出てきたらどうしようとか、見えては成らないものが見えたら・・・、 車庫だったらしい中に積み上げられた家財道具や荷物が異様な形に見えてしまいそうだったり・・・。 やがて、師匠が「こっちの方が凄くいるよ!」と戻って来て教えてくれた。 「こっちも結構いますので、キリが付いたら行きます。」 と、怖くないフリはしてみたが、「折角これだけ飛んでいるのだから・・・」と出来るだけ頑張った。 入り口から、30メーターは見通せる真っ暗闇に向けての撮影は、おそらく、諸条件がバッチリだった事も重なり、ヒメボタルの光跡の面白さを、それなりに追求出 来たのでは? 師匠が、撮影していた場所は特別な場所ではなかった。 道路沿いから、敷地の中を撮影しているに過ぎない。 全く怖さなどなかった。 しかし、流石師匠!しっかり見通しの良い場所を探し当て、 直ぐ目の前に大きな木や邪魔になる低木、草木がない!しかも、門灯が12時を過ぎて消えた事までチェック、比較的開けた草地と、左側にカメラを振れば木立もあるという、なかなか贅沢な視界。 こうした場所の見つけ方に、近藤師匠のキャリアを痛切に思い知らされるのである。 残念ながら、道路端なので、車が通る時は折角の写真も昼間の写真となり、没となってしまう(何枚か光害を受けたものもアップしました) が、それでも宮司さんの「お庭」とは別な雰囲気でいい撮影ポイントだった。 近藤師匠と自分とは今回暗黙の了解で、お互い二岡の混雑を毛嫌いしていたのかも知れない。 それは、この地に何回も足を運んだ結果、得ることになった結論でもある。 確認の為、午前2時近くに宮司さんの「お庭」と神社境内に言ってみたが、時間が相当遅かったこともあり、撮影する気にもならない頭数しか飛んでおらず、一枚もシャッターを切らず。 境内に至っては一頭もヒメと出会うことなく神社を後に。 殆どトラックしか走っていない東名高速に乗り45分で海老名に 到着。 恒例のヒメボタル撮影も、お手軽な場所で、キッチリ仕上がりました。 撮影日:2017−7−3 静岡県御殿場市東田中にて |
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