相棒の栞  モバイル版

愛知県名古屋市天白区菅田
撮影日時 : 2019−5−26
5月の栞 『相生山緑地公園のヒメボタル』
今年で3年目だが、過去二回に比べて今年が一番外れだった。蛍の飛翔数に関しては、自分なりにそれなりの情報源があるので(実際に現地へ言って撮影に臨むカメラマン、それも御ひとかたはプロのM氏=彼には前日お会いして、直接話をして様子を聞き出している=もう、ひとかたは有名なS電さん)、それに加えて名古屋城のヒメボタル情報が毎日数字としてブログに上がってくる。名城は24日〜25日にかけてピークの判断をしていたので、26日では相生山は少し遅いかとは思ったが、都合が付かなければ多少のずれは仕方がない。簡単に言うと、梅林は12日の週、竹林は19日の週の半ば頃が良かったというのが現地に赴いた知人の情報。やせ我慢半分で申し上げれば、別にこの場所のピークなんて有って無い様なもの。公園内と言うか一山(緑地)を移動すれば、何とかなると思っている。しかし、今回のような極端な飛翔開始時間の遅れは、誰にもどうする事が出来ない。まるで事故で不通に成った電車をホームで待つようなもの。いつ運行開始になるか見通しが立たず、駅員の案内も全く無い状態に等しい。

光のシンクロがピークを迎えたのは、日付けが変わった午前一時頃。はっきり言って、とっくに気力も体力も失せてしまっていた。何せ19時半には師匠共々撮影場所のチョイスは終わっていて、お互い、それぞれ目的の場所(師匠の観覧記には、相棒は一昨年のリベンジと書かれているが、決してリベンジ=復讐、雪辱戦=ではなく、今回はお気に入りの場所を積極的に選択したに過ぎない。一昨年の撮影は、初めての場所としては納得至極である。)へと別れ、スタンバイOKの状態だった。この日の自分の撮影計画を申し上げれば、入口から一番近く、坂を上がらなくて済む「炭焼き小屋付近」の竹林。当然、昨年19時半からチカチカ始まったので、「今年も」と思うのはほぼ当たり前。いや、そうだと信じて準備をしなければいけない。タイムスケジュールでは炭焼き小屋付近で20時から21時半にかけてブルート−ンを背景に撮影。その後、近藤師匠のいらっしゃる人気スポットへ合流し、軽く一時間位。次に、そこを通り過ぎ昨年「良いな」と思った、橋を渡った先の山の斜面を50ミリで。と言うのが構想。ここで2時間も費やせば25時頃になって、そろそろ帰り支度。机上の予定はざっとこんなところ。それがドウでしょう!今年は最初のポイントから、三脚を一センチたりとも動かさず、そのまま待機。午前2時に師匠からの電話で、最後の長秒露光。そして帰り支度。車まで戻るのに10分少々。機材を車に入れるのに5分以上かかり、午前2時半過ぎに山根口付近で師匠と合流。実質の撮影時間は、7時間滞在中の1時間程度だった。

今回の場所は、相生口から近く、坂も緩い為比較的多くの見物客が通る。この日に限って言えばカメラマン6名、見物客20人くらいが、自分の後ろを通過して行った。カメラマンは全員足を止めて情報交換をさせてもらい、見物の人たちとは挨拶を交わす程度(そのうち面倒くさくなって挨拶せず無視)。その都度周囲の状況を聞き出したくて質問したのだが、全て芳しい答えはなかった。到着時気温が32度有ったが、7時半には6度ほど下がり暑さは感じなかった。しかし、蚊の多さには閉口した。近藤師匠のアドバイスでネットつきの帽子を持参したので、顔面攻撃は免れたが、手の甲十箇所、靴下の上からズボンと靴の切れ目を六箇所やられた。たまたま、通りかかった蛍撮影が初めてだという若いカメラマンと長話をしていると、虫除けスプレーを持っているというので、全身にかけてもらった。30分位は効果があったが、その後は、再び蚊の猛攻撃を受けた。昨年までは、蚊が多いという認識が無かったので、とんでもない高温だった影響が出たようだ。

20時半になっても一向に飛び始めない状況に「藁をも掴む」心境で通る人、通る人に聞いてみる。昨日の午前0時近くにここを通ったと言う、中一の女の子を連れたお父さんの「目撃情報」によれば、「そこそこ飛んでいた。」との事。地元の方らしくこの地域のことを色々教えてくれた。20時56分、近藤師匠から2度目の電話がかかる。「3頭確認。葉っぱの下には10頭くらいいる。」的確なご報告だった。確かに、こちらも木の下辺りで二頭光ったのを確認していた。状況はほぼ同じ。気温は23度、湿度64%ほど。「此れなら飛んでもおかしくないのに。」と思いながら付近を歩き回ることにした。もとより小さなライトを点けっ放しにして(カメラマンは誰もいないので)、戻って来た時に自分の位置が判らなくならないように・・・。

山根口まで上がろうが、菅田口まで下りようが、一向に飛び始めた様子は無い。22時過ぎには気温22度、湿度70パーセント近くまで上がっている。条件は悪くは無いはずなのだが。いつの間にか、プンプンうるさかった蚊も大人しくなり、頭がボートなり眠くなってきた。簡易のイスを持ってきていなかったので、ずっと立ったまま4時間ほど経過している。そこで、炭焼き小屋まで50メートルほど下り、ベンチの上に寝転がる。全身の疲労が少しずつ抜ける感じが気持ちよかった。30分位は眠っただろうか?遠くから女性の会話が耳に入り、目を覚ました。辺りを見回してみても、一昨年はここでも乱舞が見られたのに今年はまだ飛んでいない。じっと横になっていたかったが、女性たちが気が付いて、悲鳴を上げるか騒ぐか笑い出すか、何らかの反応が感じ取れたので急いで起き上がった(そこに座っているだけでも不気味だろうけれど)。

三脚設置場所まで戻リ、ボーと前面の竹を眺めていると、菅田口方向から三脚を担いだカメラマンが一人上がって来た。彼は一通りぐるっと回って来たらしく、「今日は遅いですねー」と挨拶。「メインのところの竹林はどうですか?」と聞くと「殆ど飛んでいない」と言う。それより彼は、この場所にカメラマンが一人しか撮影に臨んでいないことに驚いていた。「この人、かなり来ているな。」と思わせる発言だった。23時37分、10頭位が草木を離れて飛び始めたので近藤師匠にメールを入れる。それにしても寂しい。此れでは撮影には未だ向かない。日付が変わって、ようやく「居る事は居るんだ」程度に増えてきた。0時半過ぎになって、まともに光り始め、シンクロがピークに達したのは午前1時を回ってからだった。ようやくタイマー・レリーズに手を伸ばす。ただ、一昨年同じ場所で撮影した時は、裏側の「双子池」方面の傾斜地からも湧き出るようにヒメが降りて来たが、今年はそれが無かった。道を横断する蛍の数も長時間露光をして撮るほどの数ではなかった。

結局、今回は一箇所のみでの撮影で終わるという寂しい結果となった。午前1時半を回って撮影に堪える数のヒメは飛んでくれたが、少しずつ空が明るくなってきたのだろうか?同じ露光時間では、次第に明るすぎる背景に変わって行った。そして潮時(撤収)を感じ始めていると、近藤師匠から丁度2時に電話が入り26時半の撤収となった。

記録的暑さの影響だと思うが、ヒメボタルも活動に適した気温が有って、暑ければいいと言うものでもないようだ。変温動物ゆえ、日中の気温が高かった事は彼等の体温を下げるのに時間がかかったのか?午前0時近くには気温21度、湿度76パーセントほどだった。竹の葉から夜露がポタリポタリと落ちる音が聞こえ、時たま竹がパキンと割れる音が、多少の驚きを感じるものの、次第に数を増すヒメボタルはそれを打ち消すかのようだった。

自宅へ戻りモニターで確認すると、それなりの頭数が乱舞し、絵になったものは非常に少なかった。実は、本来予定していたのは28日の火曜日だった。平日狙いを良しとしていたが、仕事が休めなくなり急遽26日にくり上げたのだが、それはよい判断だったと思う。名城のヒメボタルも25日・26日は1000頭を越えていたが、翌日から300頭近く減り続けていた(27日716,28日475、29日は雨という状況で186)。それでも今回の最大の問題は、飛翔時間の短さにあることは自明。あと、一説によると、名城のヒメボタル発生数には3年周期説が有り、今年がその最低年に当たるとか?(因みに昨年名城でのヒメボタルの最大頭数は5月20日の3340頭の記録があります。)ただ、「じゃあ来年こそは・・・。」と思いたいのですが、此れを書いている28日深夜〜30日未明現在、なぜか未だに疲れが抜けず、来年の事はあまり考えたくはない気分なんです。

アクセスカウンター アクセスカウンタ